女友達を優先する恋人とは、もう終わりにします

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女友達を優先する恋人とは、もう終わりにします

GoodNovel 完結

7度目の婚約パーティーで、沢田智哉(さわだ ともや)は、また私を残して昔からの女友達のもとへ向かおうとしていた。 付き合って10年。これは、私たちにとって7度目の婚約パーティーだった。 そのたびに、その女友達には決まって何かが起きた。 今回だけは、思わず智哉を引き止めた。 「あとは指輪を交換するだけでしょう。そんなに時間はかからない。少し熱があるだけなら、すぐに行かなくても大丈夫じゃない?」 それを聞いた智哉は、途端に怒り出した。 「玲奈、いい加減にしてくれ。美羽ちゃんが昔から体が弱いのは、分かってるだろ!それに、俺たちはもう10年も付き合ってるんだ。婚約パーティーなんて、一度くらい中止になっても別にいいだろ」 その場に私を残し、智哉は会場を出ていった。 けれど今回は、もう本当に疲れた。

チャプター (1)

第1章

7度目の婚約パーティーで、沢田智哉(さわだ ともや)は、また私を残して昔からの女友達のもとへ向かおうとしていた。 付き合って10年。これは、私たちにとって7度目の婚約パーティーだった。 そのたびに、その女友達には決まって何かが起きた。 今回だけは、思わず智哉を引き止めた。 「あとは指輪を交換するだけでしょう。そんなに時間はかからない。少し熱があるだけなら、すぐに行かなくても大丈夫じゃない?」 それを聞いた智哉は、途端に怒り出した。 「玲奈、いい加減にしてくれ。美羽ちゃんが昔から体が弱いのは、分かってるだろ!それに、俺たちはもう10年も付き合ってるんだ。婚約パーティーなんて、一度くらい中止になっても別にいいだろ」 その場に私を残し、智哉は会場を出ていった。 けれど今回は、もう本当に疲れた。 第1話 婚約パーティーの会場で、私はステージの中央に立っている。智哉は今回も冷たく背を向け、一度も振り返らずに会場を出ていった。 いつもそうだった。智哉は親族の視線など気にも留めず、私一人をその場に残した。周囲からあれこれ言われるのも、決まって私だった。 私、成瀬玲奈(なるせ れいな)は、あと1年で35歳になる。智哉と付き合って、もう10年だ。 私と智哉は幼なじみで、私たちがまだ母親のお腹にいた頃、親同士が将来私たちを結婚させようと約束していた。 だが、そんな親同士の約束を本気にする者はいなかった。幼い頃から智哉に片思いし、いつか本当に智哉と結婚できる日を夢見ていたのは私だけだ。 ところが、智哉の父・沢田邦夫(さわだ くにお)は古いやり方に固執し、会社の経営を傾かせた。株価は下がり続け、ついには倒産寸前まで追い込まれた。 そこで沢田家は昔の約束を持ち出し、成瀬家との縁談を利用して会社を立て直そうとした。 長く会社を経営してきた両親は、邦夫の狙いをすぐに見抜き、初めから断るつもりだった。 だが、その話を偶然聞いてしまった私は、どうしても智哉と結婚したいと両親に食い下がった。両親は仕方なく折れ、まずは付き合ってみることを許してくれた。 両親を含め、誰もが私の気持ちを一時的なものだと思っていた。私なら、もっと家柄のいい相手を選べるからだ。 まさか、それが10年も続くとは、誰も思っていなかった。 今回で7度目の婚約パーティーだ。会場にいる親族や友人は、1回目や2回目の頃と比べるとずっと少ない。 両親さえ来ていない。 今も出席してくれるのは、仕事目当てでうちに取り入ろうとする人ばかりだ。 壇上に立ったまま、出席者全員の前で智哉に電話をかけた。これを智哉にすがる最後の電話にして、自分で退路を断つつもりだった。 「智哉、もういい加減にして。みんな、智哉が来るのを待ってるの。今回でもう7度目なのよ」 私の口元にあった司会者のマイクを通し、智哉の声が会場中に響いた。 「玲奈、何度言えば分かるんだ。美羽ちゃんは熱を出してる。人の命と、こんな形だけの儀式と、どっちが大事なんだ? 10年も付き合ってきたのに、まだ俺を信じられないのか? もう電話してくるな。婚約パーティーなら、また今度ちゃんとやる」 引き止めようとした瞬間、智哉は電話を切った。会場中にどよめきが広がった。 智哉のせいで人前に恥をかくのは、これが初めてではない。もう慣れていた。 これまでと同じように、手際よく運転手を手配し、出席者をそれぞれ家へ送った。その間も、周囲のひそひそ話に一人で黙って耐えた。 両親とも、ほとんど連絡を取らなくなっていた。 最後の一人を見送ったあと、インスタを開くと、最新の投稿は白川美羽(しらかわ みう)のものだった。二人が手をつないだ写真も添えられている。 【慣れない場所でも、彼がいてくれてよかった】 写真には、珊瑚のブレスレットをつけたもう一人の手も写っていた。智哉の手だとすぐに分かった。 それは、智哉の誕生日に美羽が自分で作ったものだ。 私も智哉にダイヤモンドのブレスレットを贈ったが、智哉はすぐに売り払い、その金をすべて美羽へ渡した。 それなのに、美羽が作った珊瑚のブレスレットは、今も身につけている。 そのことを問い詰めたときも、智哉はひどく面倒そうに答えた。 「俺にくれたものなんだから、どうしようと俺の勝手だろ。 美羽ちゃんは地方から出てきて、一人で頑張ってるんだ。体だって弱い。友達として少しくらい助けたっていいだろ。 それに、この珊瑚のブレスレットは美羽ちゃんの手作りだ。玲奈のより、よっぽど気持ちがこもってる。せっかくの気持ちを無駄にできるわけないだろ」 第2話 それから毎年、智哉の誕生日には、高価なプレゼントとは別に、自分で作ったものも必ず用意した。 手作りのネックレスやブレスレット、アルバム、マフラー…… 自分に作れるものは、ほとんど作り尽くした。もう、できることは何も残っていないと思うほどだった。 それでも、私の気持ちが智哉に届いたことは一度もなかった。 美羽が私に見せつけるために投稿したのだと分かっていた。私と智哉がデートをしているときも、美羽がメッセージを送れば、智哉はすぐに私を置いて美羽のもとへ駆けつけた。 私は広い会場に一人で座り、テーブルに並んだ高級酒を一本ずつ開け、次々と喉へ流し込んだ。 胃が締めつけられるように痛んでも、酒が回るにつれて感覚は麻痺していった。 今度こそ、絶対に智哉を許さない。 激しい頭痛とともに目を覚ました。 案の定、智哉は美羽のために、一晩中帰ってこなかった。 以前のように智哉へ電話をかけることはせず、自分で二日酔いの薬を飲んだ。これまでは、夜通し帰らず、酒臭いまま朝帰りする智哉のために、いつも私が薬を用意していた。 今度こそ仕事だけに打ち込み、智哉に傷つけられたことを忘れたかった。 成瀬家の会社は上場を控え、今が正念場だ。 片手でコーヒーを飲み、もう片方の手でキーボードを操作していると、智哉が帰ってきた。 徹夜明けらしく、目の下には隈ができていたが、それでも隠しきれないほど上機嫌だった。 朝6時に私が食卓についているのを見て、智哉は驚いた。こんな時間に起きていることなど、めったにない。 智哉は気まずそうに私の背後へ回り、パソコンの画面をのぞき込みながら、両手で肩を揉み始めた。 私は無表情のまま、一言も口にしなかった。 「今日はどうしてこんなに早く起きたんだ?もう少し寝てきたらどうだ」 私が怒っていると分かっているからか、智哉の口調はいつもよりずっと優しかった。 「悪かった。昨日は一人で置いていくべきじゃなかった。 俺も焦ってたんだ。美羽ちゃんにはこっちに家族もいないし、親しい友達だっていない。頼れるのは俺だけなんだ。 子どもの頃に溺れた俺を美羽ちゃんが助けてくれたのは、玲奈も知ってるだろ。恩返しをするのは当然じゃないか」 私が何も答えずにいると、智哉は勝手にパソコンを閉じた。私を抱き上げて自分の膝に乗せると、向かい合ったまま甘えるように機嫌を取ってきた。 以前なら、智哉がここまで根気よく機嫌を取れば、とっくに怒りは収まっていた。 だが今度こそ、もう許さないと決めている。 「智哉を助けたのは美羽じゃないって、何度も言ったでしょう。どうして信じてくれないの?」 「玲奈、また自分が助けたって言うつもりか?子どもの頃、溺れて目を覚ましたとき、俺は美羽ちゃんに抱きかかえられていたんだ。こんなことで嘘をつくのはやめてくれ!」 智哉は一度も、私の説明を信じようとしなかった。 「智哉、別れよう。智哉が美羽と想い合ってるなら、私はもう二人の邪魔はしない」 付き合って10年、初めて私から別れを告げると、智哉は途端に取り乱した。 「何度言えば分かるんだ。俺と美羽ちゃんは、ただの友達だ。いったい何をそんなに騒いでるんだ!しかも、美羽ちゃんは俺の命の恩人なんだ。面倒を見てくれないのはまだしも、こんなことで機嫌を悪くするなんて、いい加減、そんな子どもみたいなことはやめてくれ」 智哉を押しのけて立ち上がると、そのまま荷物をまとめ始めた。 「もう、わがままを言ってるんじゃない。智哉、今度こそ本当に別れる。お互いの両親には、私からきちんと説明する」 会社近くのマンションにはいつも着替えを置いてあるので、荷造りはすぐに済んだ。そのまま運転手へ連絡し、車を回すよう頼んだ。 私が本気だと分かると、智哉は目に涙を浮かべて腕をつかんだ。 「婚約パーティーを最後までやらなかったことに怒ってるだけだろ。来週末こそ、必ず最後までやるから」 第3話 子どもの頃から智哉の涙を見るのが何よりつらく、今回も胸が締めつけられた。 どれほど深く傷つけられても、まだ智哉を愛している。その気持ちだけは、自分でも否定できなかった。 涙を拭おうと手を伸ばしたそのとき、リビングのテーブルに置かれた智哉のスマホが鳴った。その着信音を聞いただけで、また美羽だと分かった。 美羽からの電話だけは取り損ねないよう、着信音を個別に設定した。 伸ばしかけた手が、宙で止まった。 電話を終えた智哉は、慌ててバッグをつかみ、靴を履き始めた。 「病院の先生から、美羽ちゃんがまた高熱を出したと連絡があった。ちょっと様子を見てくる。玲奈、頼むから、もう勘弁してくれ。美羽ちゃんの世話で、俺も疲れてるんだ。帰ってくるまで待っててくれ」 そう言って頬にキスをしようとしたが、私は顔をそむけた。 智哉はまだ何か言おうとしたが、手にしたスマホが立て続けに鳴った。ちらりと私を見ると、そのまま背を向けて出ていった。 そんな姿は、嫌というほど見てきた。そのたびに見送った背中を、今も忘れていない。 自分のマンションで、婚約パーティーの準備中にたまった仕事を片づけるつもりだった。だが、母から電話があり、必ず実家へ戻るよう言われた。 婚約パーティーがまた台なしになったことを、両親も知ったのだろう。 両親はもう、恥をかかせてばかりの私など、娘とは思っていないはずだ。それなのに、今回はどうして突然、母が私を実家へ呼んだのだろう。 実家に戻ると、父・成瀬雅人(なるせ まさと)と母・成瀬佳代(なるせ かよ)がソファに並んで座っていた。二人は昔と変わらず仲がよく、その姿を見ているうちに、やるせなさが込み上げた。両親の仲がよかったからこそ、私も相手のために尽くせば、同じような幸せを簡単に手に入れられると思っていた。 それなのに、10年も尽くした私は、何ひとつ手に入れられなかった。 両親に声をかけようとしたとき、そばから刺々しい声が飛んできた。智哉の母・沢田真由美(さわだ まゆみ)だ。 真由美は派手に着飾り、鮮やかな赤いネイルを施した手でティーカップを持っている。 「玲奈ちゃん、また智哉を怒らせたの?幼い頃から一緒なんだから、あの子の性格くらい分かってるでしょう。もう少し智哉に合わせてあげなさい」 邦夫がわざとらしく咳払いをした。真由美をたしなめるふりをしているが、二人が似た者同士なのは誰もが知っている。真由美がこちらを責め、邦夫が横からなだめる。二人でそんな芝居をしているだけだった。 今、うちの会社は順調そのものだ。沢田家はうちが支えなければ、とっくに倒産していた。 それでも、私が智哉だけを一途に追い続けたせいで、沢田家は成瀬家なら簡単に言いなりにできると勘違いしている。 何かにつけて成瀬家に金を出させ、うちの仕事まで横取りしてきた。 両親はそんな私を快く思っていなかった。それでも、私は二人の実の娘だ。智哉と結婚すれば、沢田家とも親戚になる。そう思って、両親はこれまで多少のことに目をつぶってきた。 二人が今日ここへ来たのも、智哉の件だけではない。きっと金の話がある。 「まあ、二人のことには、私たちも口を出しません。佳代さん、今日は会社のことでお願いがあって来たんです。最近、資金繰りが厳しくて。少し援助してもらえませんか。いずれ親戚になるんですから、助け合ったほうがお互いのためでしょう」 二人が金の無心に来るのは、もう何度目か分からない。 智哉が私と結婚すると信じ込んでから、二人は毎日のようにギャンブルにのめり込んでいる。 父が私を見た。私の反応を待っているのだ。 金を出してもらえると信じ切っている二人を見て、どうやら今回は、その期待を裏切ることになりそうだ。

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